日本の伝統文化を現代に紡ぐ

水郷日田の鵜飼

水郷日田の鵜飼

鵜飼とは、鵜という鳥を使ってアユ(鮎)などの川魚を獲る伝統的な漁法のことです。日本独特の漁法と思われていますが、中国などでも古くから行われていますし、ヨーロッパへも東アジアから伝えられたといいます。現在、日本の伝統文化を現代に伝える鵜飼が国内の13カ所で行われています。そして鵜を操って川魚を獲る人を鵜匠と呼びます。
日田の三隈川で鵜飼が行われるようになったのは、今から約400年前。日田を治めた豊臣秀吉の家臣が、岐阜から鵜匠を招いて三隈川で鵜飼をさせたことが始まりといわれています。江戸時代に徳川幕府の直轄地となった天領の時代からは、屋形船から鵜飼を見物する川遊びが盛んに行われるようになり、夏の夜の風物詩として定着するようになったと伝えられています。
日田三隈川の鵜飼は夏の風物詩として有名です。細長い鵜飼い船の舳先(へさき)にかがり火をつけ、1人で6羽~8羽の鵜を巧みにあやつって鮎などの魚をとる鵜匠の様はあざやかで、例年5月20日から10月末まで行われます。

鵜の鳥

日田の鵜飼で用いるのはウミウ(海鵜)です。カワウ(川鵜)は小さすぎるし、鵜飼には不向きなのだそうです。海鵜は渡り鳥で、個別に餌を獲ります。それに対して川鵜は集団で餌を獲り、渡りをしない留鳥です。
荒鵜 /
日田では鵜のことをウノトリ (鵜の鳥)と言うことが多いようです。昔は福岡県玄海町神湊で獲れたウミウ(海鵜)を取り寄せていたといいます。『水郷日田盆地』(昭和43年)には毎年玄海の唐津や日本海の浜田の荒鵜(生後1年位)を買入れたと書かれています。現在は茨城県日立市で捕獲したウミウを取り寄せていますが、これも昭和50年代後半になってからのことです。
鵜を馴らす/
11月末から12月初めに秋鵜を取り寄せます。2〜3月頃まで仕込み、3~4月頃に川に馴れさせて、5月の初めにようやく出せるようになるのです。2~3月頃までは仕込みといって、プール近くの篭などに入れておいて人に慣らせます。1ヶ月ほどで口を無理矢理開けて、餌になる魚を食べさせたり水を飲ませたりします。1ヶ月ほどすると、自分から魚を食べるようになります。手縄をつけプールの中を泳がせ、鵜篭の上に乗せて、じっと鵜篭の上で止まるように訓練します。馴れてくると、羽根を広げて乾かすようになります。

鵜鳥屋 /
ウドヤ(鵜鳥屋)と呼ばれる島小屋で鵜を飼います。鵜匠の屋敷内には母屋から独立した鵜鳥屋があります。止まり木を差し渡して、50cm幅で仕切りを作っておくと、カタリオウテいる鵜は2羽ずつ仕切りの中に入って留まります。それぞれの鵜は決まった場所に留まる習性があります。小屋の床には稲藁や稲籾を敷いていて鵜の糞尿等で湿ってくると、その上に新しい稲藁や籾を撤いて広げます。年に一度、11月に大掃除して稲藁や籾をすべて取り替えます。
鵜の餌/
1日1回、夕方6時から7時頃に餌を与えます。鵜は1日約700グラムの魚を餌として食べます。鵜は毎日決まった時間に餌を与えていますと、食事前の夕方5~6時頃に、骨などの胃腸で融けないものを団子にして吐き出します。この吐瀉物はとっても臭いのです。これを吐き出してからでないと、鵜は餌の魚を食べないのです。
鵜の操り方/
鵜飼で一番難しいのは手縄さばきです。鵜匠は鵜の動きを見ながら絶妙に持ち替えます。手縄が水中に浸かると、絡まりやすくなります。そのため手縄が水中に入らないよう、しっかりと引いておく必要があります。片手で操作することもあって、日田の鵜匠は最大でも8羽の鵜までしか操れません。鵜は1時間仕事をさせたら、15分間船に上げて休ませる必要があります。鵜匠は鵜の首のふくれ具合を見て、魚を吐き出させます。日田では川の中を泳いでいる鵜を引き寄せて頸をつかんで船内に魚を吐き出させます。

カタリアイ/
鵜は2羽でペアを組みます。昔は2羽仕入れたら、カタリアイ専用の鵜籠に入れて何ヵ月も一緒にしておくと、ペアを組むようになりました。現在はゲージに囲まれたプールで飼っているので、自然にカタリアイをして一緒になります。鵜は外見からは雌雄が分かりにくい鳥です。カタリアイは雌雄の組合せとは限りません。カタリアイをした鵜同士で秋に交尾をしますが、飼育中の鵜は産卵しません。
鵜の飼育/
昔は一年間通年で漁をしていたので、中には30年とか35年も長生きする鵜がいました。20歳ぐらいまで鵜飼に使えます。鵜は賢い鳥ですが、年取った鳥ほど利口です。冬季の昼川では、鵜が来ると、魚は大きな石の下に潜みますが、賢い鵜は石の下の魚の尾ビレだけでも尖ったクチバシで挟んで引きずり出すことができます。10年か15年ぐらい経った年のをとった鵜は海に放します。12月頃に羽根が生え替わった頃、中津や別府に鵜籠に入れて持って行き、海岸で放してやると飛んでいきます。そのため、新しい鵜を買う必要があるのです。

ウドヤ(鵜鳥屋)と呼ばれる鳥小屋で鵜を飼います。

古式ゆかしい伝統の道具

腰みの

水しぶきをさけ、体が冷えるのを防ぐため、ワラで編んだみのを腰に巻きます。

ウカゴ(鵜籠)
鵜を入れて運搬するための竹製の容器です。2つに分割されています。
テナワ(手縄)
鵜匠が鵜を操るための長さ約4mの細綱です。ウヅナ(鵜綱)とも呼んでいます。
竿さしの竿
竿の長さは約3メートル50センチ 竹竿です。
松割木
かがりで燃やされる木は燃えやすく、火力の強い松の木が用いられます。
水汲み
鵜飼舟の中に入った水を、外に掻き出す道具です。
しょうけ
鵜が飲み込んだ魚を、舟の上で吐かせる時に使う吐(はけ)かごです。
胴巻
鵜に直接装着する固定具です。鵜の首をしめて魚を呑み込ませないようにします。
篝(かがり)と篝棒
鵜飼船の先に、かがり火を燃やす鉄製のかご。強い火力のため、変形することもあります。
鵜飼船
全長約7.50m。日田の鵜飼船は小さくて短いので、鵜匠と船頭の2名だけが乗り込みます。
風折烏帽子と漁服
かがり火から頭髪を守るため、麻布を頭にかぶり、木綿でできた漁服を着ます。

一般社団法人日田観光協会 大分県日田市元町11-3 Tel.0973-22-2036
日田市商工観光部 観光課 Tel.0973-22-8210(直通)
水が磨く郷/大分県日田市 https://www.oidehita.com
監修 段上逹雄

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